平成 26 年度
包括外部監査の結果報告書
( 概要版)
相模原市包括外部監査人
中元 文德
平成27年2月6日 相模原市発表資料
お問い合わせ 監査委員事務局
第1 外部監査の概要
第 1 外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第252条の37第1項に基づく包括外部監査 2.選定した特定の事件
生活保護等に関する事務の執行について 3.外部監査対象期間
原則として平成25年度(平成25年4月1日から平成26年3月31日まで) ただし、必要に応じて平成24年度以前及び平成26年度の執行分を含む 4.事件を選定した理由
相模原市の平成25年7月時点の保護率(人口100人あたりの生活保護受給者数の比率)は 1.85%で、平成15年度の保護率(0.81%)と比較すると大きく上昇しており、この10年で生活保護 受給者数は大きく増加している。
生活保護受給者数の増加に伴い、相模原市が支出する生活保護費も増加している。相模原市の 平成25年度の生活保護費(当初予算額)は220億円で、10年前の平成15年度決算額(85億円) より135億円増加している。また、平成15年度決算では、一般会計の歳出総額(1,624億円)に占め る生活保護費の割合は5.2%であったが、平成25年度当初予算では、一般会計の歳出総額(2,445 億円)に占める生活保護費の割合は9.0%で、歳出総額に占める割合も増加している。
生活保護制度は、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を 行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とした制度で あるが、近年では不正受給や、働くよりも生活保護を受けている方が収入が増える場合があるなど、 制度に対して様々な問題や課題が指摘されている。
このように、生活保護制度は、相模原市の財政に与える影響も大きく、また、制度の信頼性や問題 点に対する市民の関心も高いと思われる。
これらの状況を踏まえ、相模原市の行う生活保護等に関する事務の執行が法令規則に準拠して 適正に行われているかどうか、また、効果的・効率的に行われているかどうかを検証する必要がある と認められるため、生活保護等に関する事務の執行を、平成26年度の包括外部監査の特定の事件
(テーマ)として選定した。
第2 外部監査の視点
第2 外部監査の視点
1.監査の基本的な視点とその検討結果
生活保護制度の目的は、資産、能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する者に対し、困窮 の程度に応じた保護を実施すること(最低生活の保障)と自立の助長である。
この目的を果たすため、相模原市は生活保護行政に関して次の業務を実施している。
≪表≫生活保護行政の業務の流れ
○ 生活の困窮を訴える者の相談を受け、申請意思を確認し申請を受ける。
○ 申請を受理した後に調査を開始し、保護の要否、種類、程度及び方法を決定する。
○ 保護が必要とされた者について生活保護を適用する。
○ 生活保護開始となった者について、生活保護からの早期脱却を主眼に、訪問による面接等によ る調査を行い、各々が抱える課題を把握し、課題解決(=自立)に資する支援策を講じる。
○ 課題解決のために必要とされる事項については、面接等を通してケースワーカーにより被保護 者に対し助言及び指導を行っている。
以上の流れを踏まえ、次の事項を監査の基本的な視点とした。
(1)合規性に問題はないか
包括外部監査の実施にあたり第一に留意すべき点は、事業に係る財務事務の執行や手続等が、 関連する法律・条例・規則に準拠しているかという「合規性」の観点である。このことは、生活保護等 に関する事務の執行についても同様であり、相模原市が行っている生活保護等に関する事務の執 行について、合規性に問題がないかを監査の基本的な視点とした。
(2)経済性、効率性及び有効性に問題はないか
地方公共団体が行う事業に係る財務事務の執行には人員や時間に限りがあり、このことは生活 保護行政も同様である。人員や時間に限りがある状況の中では、合規性が遵守されていても、経済 性、効率性及び有効性に大きな問題が生じていることは許されるものではなく、市民の要望に反す ると考えられる。
無駄を排除し、より成果の上がるよう、相模原市は生活保護行政に関して効率的に事務を行う必 要があり、包括外部監査においては「経済性、効率性及び有効性」の観点も重要であり、これを監 査の基本的な視点とした。
(3)生活に困窮する市民に対し、最低限度の生活を保障するものとなっているか
第2 外部監査の視点
2.実施した監査手続
生活保護行政の流れ及び監査の基本的な視点を踏まえ、次の監査手続を実施した。
(1)監査対象事業の把握
相模原市の生活保護行政について事業の説明資料を閲覧した。また、これらの資料について、 事業を所管する部署から意見聴取を行い、事業の概要を確認した。
(2)他の政令指定都市等との比較分析
生活保護行政の状況を概括的に把握するため、また市の生活保護行政に関する強み・弱みを 認識し今後の課題の検討に資するため、他の政令指定都市等の生活保護行政に関するデータと 相模原市のものを比較分析した。
(3)関連資料の閲覧と所管部署に対する質問
生活保護行政についての予算の執行に関連する資料及び生活保護行政の経営に関する資料 を閲覧し、法規準拠性及び効率性・経済性・公平性の点から検討した。
これらの内容については、必要に応じて所管部署に対し質問を実施している。
(4)現地視察
必要に応じて福祉事務所に赴き、事業の実施状況を視察した。また、現場担当者に事業の概況 について意見を聴取した。
視察対象施設の名称 視察対象施設の場所 中央福祉事務所 中央区富士見6-1-20 あじさい会館5階
緑福祉事務所
緑区西橋本5-3-21 緑区合同庁舎3階 緑区中野633 津久井総合事務所本館3階 南福祉事務所 南区相模大野6-22-1 南保健福祉センター3階
(5)監査報告書の作成
以上の結果を取りまとめて、『平成26年度包括外部監査の結果報告書』を作成した。
第3 外部監査の対象の概要
第3 外部監査の対象の概要
1.相模原市の生活保護費の決算状況と監査範囲に含めた事業
(1)監査対象とした平成 25 年度の生活保護事業に係る歳出
地方公共団体の決算(予算)科目は「款・項・目・節」に区分される。相模原市が毎年度作成して いる「相模原市一般会計歳入歳出決算事項別明細書」(以下「相模原市決算書」という。)では、生 活保護に関連する支出は、「第15款 民生費」の中の「第15項 生活保護費」(以下「生活保護費」 という。)に計上されている。
次表は、平成25年度の生活保護費を細々目別(事業別)に分類したものである。
次表に記載した事業のうち細々目の生活保護費(20,887,336千円)について監査を実施した。
≪表≫生活保護事業に係る歳出(平成 25 年度)の内訳 (単位:千円)
款 項 目 細々目
平成25年度 決算額
民生費 生活保護費
扶助費 生活保護費 20,887,336
生活保護総務費
職員給与費 859,190 生活保護法施行事務費 302,279 生活保護施設運営費補助金 1,671 生活保護総務費合計 1,163,141
合計 22,050,477
(2)監査対象とした平成 25 年度の生活保護事業に係る歳入 次表は、生活保護事業に係る歳入の内訳を示したものである。
歳入の主なものは生活保護費負担金(民生費国庫負担金)で、その他には、セーフティネット支 援対策等事業費補助金(民生費国庫補助金)などがある。
次表に記載した事業のうち、生活保護費負担金(15,655,015千円)について監査を実施した。
≪表≫生活保護事業に係る歳入(平成 25 年度)の内訳 (単位:千円)
款 目 細節
平成25年度 決算額 国庫支出金
民生費国庫負担金 生活保護費負担金 15,655,015 民生費国庫補助金 セーフティネット支援対策等事業費補助金 53,757 民生費国庫委託金 生活保護指導監査委託金 19,032 県支出金 民生費県補助金 緊急雇用創出事業臨時特例交付金 214,332
合計 15,942,136
第4 外部監査の結果及び意見
第4 監査の結果及び意見
監査の結果・意見の項目数
記載箇所 結果 意見
「第4 監査の結果及び意見」 10 48
※ 監査の結果
今後、相模原市において何らかの措置が必要であると認められる事項。主に、合規性に関するこ と(法令、条例、規則、規程、要綱等に抵触する事項)となるが、一部、社会通念上著しく適正性を 欠いていると判断される場合には、経済性、効率性及び有効性の観点からの結論も含まれる。
※ 監査の意見
「監査の結果」には該当しないが、経済性・効率性・有効性の視点から、施策や事務事業の運営 の合理化等のために、包括外部監査人として改善を要望するものであり、相模原市がこの意見を 受けて、何らかの対応を行うことを期待するもの。
Ⅰ. 生活保護行政の現状分析
1.生活保護費等の状況 特に記載すべき事項はない。
2.被保護世帯数等の状況 特に記載すべき事項はない。
3.相模原市の生活保護行政の概要
① マニュアルの整備について【意見】
現在の各福祉事務所の人員構成をみると、新規採用(相模原市役所に入庁し最初の配属先が生 活支援課である職員)の人数は、中央福祉事務所が26人(全所員の35.6%)、南福祉事務所が22 人(同45.8%)、緑福祉事務所が11人(同36.7%)で、いずれも比較的多いといえる。
また、現職平均年数は、中央福祉事務所が1.9年、南福祉事務所が1.7年、緑福祉事務所が1.4 年でいずれも短く、平均担当ケース数は、中央福祉事務所及び南福祉事務所が 79.4 件、緑福祉 事務所が77.4件である。
新規採用の職員が 80 件前後のケースを担当し、時間内に事務処理を行うには、組織内研修や 業務マニュアルの活用が有効と考える。
現状においては、ケースワーカーの業務マニュアルについて、市全体の統一的なものは存在し ていない。
生活保護に関する事務については、各福祉事務所で状況に違いがあり、マニュアルもその違い
第4 外部監査の結果及び意見
を踏まえ各福祉事務所で対応を図っているとのことであるが、基本的な事務手続に大差はないと思 われる。市としての統一的な業務マニュアルを作成しておき、必要に応じて各福祉事務所がカスタ マイズや項目の追加を行っていくことが望ましい形と考える。
生活保護法及びその他関連法規は度々改正が行われ、生活保護手帳なども毎年更新されてい る。ケースワーカーの業務マニュアルについても最新の法規と一致するように定期的に更新し、新 規採用及び異動してきた職員の業務の有効性と効率性の確保等に資するものとして、整備していく 必要がある。
4.保護率の他市比較
特に記載すべき事項はない。
5.扶助費の増加が相模原市の財政に与える影響 特に記載すべき事項はない。
第4 外部監査の結果及び意見
Ⅱ. 生活保護の開始に関する手続
1.生活保護の相談・申請
① 申請書の申請日付の記入漏れについて【結果】
中央福祉事務所において、保護申請時に必要となる保護申請書を30件抽出し確認したところ、 2件について申請日の記載がなされていなかった。
市によると、単純な記載漏れとのことであるが、保護申請書の申請日は申請者が記入するべきも のであり、記載漏れがないよう留意する必要がある。
2.実施責任・要保護者の発見・把握(関係機関等との連絡・連携) 特に記載すべき事項はない。
3.資産の活用と資産調査
① 預貯金調査の結果の適切な記録について【意見】
預貯金調査により、新規調査時にはわからなかった預金が判明している事案を確認した。担当 者によると、その預金は個別の事情により、申請者世帯の資産として認識できない預金であったと のことである。しかしながら、その個別の事情を適切に記録していないため、担当者が預貯金調査 結果を確認したのかどうか、あるいはその結果をどう判断したのかが、担当者以外には分からない 状況となっていた。
預貯金調査は、その結果によっては生活保護の継続や保護費の計算に大きく影響することにな る。新規調査と整合している場合も含めて、預貯金調査の結果を確認したこと、及びそれに関して 判断した内容については適切に記録しておく必要がある。
② 預貯金調査の回答がない場合の対応について【意見】
預貯金調査の依頼から半年以上を経過しているにもかかわらず銀行からの回答がなく、再照会 を実施していない事案を確認した。
調査の依頼から3か月程度経過した段階で調査結果を点検し、未回答のものについては再照会 を行うことを事務作業の目安としているとのことだが、現状は再照会を実施するタイミングが明確と なっていない。
金融機関からの回答がない場合には、ただちに再照会を実施する必要があり、そのことを徹底し ておく必要がある。
③ 住所相違の場合における預貯金の再調査について【意見】
預貯金調査について、住所相違で戻ってきたが、その後、再調査を行っていない事案を確認した。 金融機関から住所相違との返答を受けた場合には、前住所以前の住所歴を調査して再調査を行う 必要がある。
第4 外部監査の結果及び意見
④ 生命保険調査の回答の入手について【意見】
生命保険調査について、契約の有無を照会したが、回答が未回収のままとされていた事案を確 認した。
生命保険調査については、契約の有無を照会した保険会社からは回答を入手しておく必要があ り、回答が未着の場合は再調査を行い、実態を把握する必要がある。
⑤ 生命保険調査の保有可否判断の明確化について【結果】
生命保険について、保有が確認されているが、保有の可否判断の結果や処理の経過について、 明確に記録されていない事案を確認した。事務処理の徹底を図る必要がある。
⑥ 自動車・バイク処分の挙証資料の取扱いについて【意見】
自動車等の処分に係る挙証資料として、自動車等を無償で処分したと記載されている、落札業 者代理人が手書きした書類の写しを入手している事案を確認した。この書類によると処分費用及び 収入はないことが示されていた。
今後同様の事案が発生した場合には、実際に自動車等を処分した業者の書類、廃車証明書な どの提出を求め、「自動車保有・指導に関する手引き」に準拠し、より証拠力の強い客観的な資料を 入手しておく必要がある。
⑦ 自動二輪車の保有への対応について【意見】
被保護者が支給開始当初から自動二輪車(100cc)を所有しているものが見受けられた。 自動二輪車については、一定の条件を満たしていれば所有することを認めるという判断もあり得 るが、原則として所有が認められないものである。要件の合致を厳格に審査し、条件を満たさない ものについては期限を明記して処分指導を行い、指導に従わない場合は保護の停廃止を行う必要 がある。
⑧ 不動産保有の容認の取扱いについて【意見】
不動産の保有は無条件に容認されるのではなく、一定の要件が必要とされている。このような取 扱いがなされているなか、不動産の名義変更が困難であるため売却に至ってないという事案が存 在していた。
保護費を受給する以上は、利用し得る資産・能力はすべて利用することが原則である。保有を容 認する場合でも、その判断はケース診断会議で慎重に行い、その記録を正確に残しておく必要が ある。
第4 外部監査の結果及び意見
4.扶養義務の取扱いと扶養義務調査
① 保護費受給期間中における扶養義務調査の実施について【意見】
重点的扶養能力調査対象者に係る扶養能力及び扶養の履行状況の調査は年 1 回は行うこととさ れている。しかしながら、扶養の可能性が期待できない等の実情が明らかとなった時は、当該世帯 の実情に応じて適宜調査することとして差し支えないともされており、現状では、扶養義務調査は保 護申請時に一度だけ行うことが多く、継続的に実施しているケースはほとんどないとのことである。
保護申請時の扶養義務調査の結果、「3年から5年後に扶養の可能性についてもう一度検討する」 旨の記録があったにもかかわらず、5年経過してもそのフォローが行われていない事案を確認した。
扶養能力調査には限界があると思われるが、当該事案のように必要性を認識していたものについ ては、適切にフォローしておく必要がある。
② 扶養義務者の資産状況の把握について【意見】
扶養義務者が自営業を営んでいる事案を確認した。当該扶養義務者については、営業状況次 第では資産を有している可能性も考えられる。市によると、扶養義務者の資産調査は、当該者への 聴取等の中で、必要に応じて調査しているとのことであるが、本事案については、必要性の有無を どのように判断したのかが不明確であった。
扶養義務者の資産状況の把握については、どのような手続を行い、その結果、扶養義務者にど れほどの資力があったかという事実を記録として残しておく必要がある。また、資力があるという心 証が得られなかったのであれば、そこに至るまでの過程も記録しておく必要がある。
③ 保護台帳の扶養義務者の状況のアップデートについて【意見】
受給対象として追加された者に対する扶養義務調査は行われているが、それらについて保護台 帳が改訂されていない事案を確認した。
適時適切な保護台帳の改訂が行われない場合には、書類間の整合性が損なわれてしまうため、 事後的な確認が困難となるおそれがある。保護台帳については今後、改訂の徹底と事後的な検証 等を行い、扶養義務者の状況をアップデートしていく必要がある。
5.他法他施策の活用
① 保護費支給開始にあたっての年金受給権の調査について【意見】
被保護者が年金受給権を有しており、これが発覚して生活保護法第 63 条返還金が発生した事 案が複数見受けられた。いずれの事案においても、遡及年金の支払対象となる年月数は 24 か月 以上もあり、受給開始から数年間にわたって未処理となっていたものである。
現状においては、各福祉事務所とも年金相談員を配置して年金受給権調査の徹底を図っている。 実際にその成果もあらわれており、改善が進んでいると思われるが、今後も、少なくとも年金受給開 始年齢に達している被保護者については年金の状況を調査すること、年金受給開始年齢に達して いない被保護者であっても、必要に応じて年金受給資格を得られるよう指導することの2点は徹底 する必要がある。
第4 外部監査の結果及び意見
② 障害基礎年金の受給状況の把握について【意見】
世帯員が重度の障害を持っており、障害基礎年金を受給していたにもかかわらず、市がその受 給の事実を把握していなかった事案を確認した。受給開始から2 年以上を経過して初めて障害基 礎年金の受給権の有無について世帯主に確認し、その結果既に受給していることが判明したもの であった。
世帯員が障害基礎年金の受給権を得てから世帯主に確認するまでに2 年以上の時間が経過し ており、この点については、市の対応に遅れがあったと推測される。結果として債務を発生させてし まい、対応としては不適当であることは否めない。市は、適時に他法他施策調査を行うよう努めなけ ればならない。
③ 雇用保険収入の受給状況の把握について【意見】
保護費の支給開始から半年が経過した後、世帯主に雇用保険収入があることが判明した事案を 確認した。
市は雇用保険収入相当額を78条徴収金と認定している。78条徴収金については、被保護者に 原因がある場合も多いのは事実であるが、市においてもこれを極力発生させないよう努める必要が ある。
6.保護の決定
① 要否判定調書の入力等について【結果】
保護を決定した事案の要否判定調書のなかに、要否判定自体に影響していない入力誤り等が 見受けられた。
要否判定調書は生活保護システム上の帳票ではなく、表計算ソフトで別途作成されているもので、 基準額表の適用や計算、入力時等に誤りが発生する可能性がある。要否判定調書は保護開始決 定の根拠であるため、すべての数値を根拠に基づき正しく入力する必要がある。
② 保護決定調書の入力について【結果】
保護決定調書の収入認定額について、児童扶養手当に入力誤りがある事案を確認した。
保護決定調書の入力誤りは支給される生活保護費の金額に直結する。従来から査察指導員や経 理担当者により再計算等の確認を行っているとのことであるが、手元での計算を要したり、複雑な処 理が必要である場合など、誤りやすい項目については、より一層慎重な確認手続を行う必要がある。
第4 外部監査の結果及び意見
あり、要否の判定を巡って問題となった場合でも、申請者に説明できるような適正な調書を策定して おく必要がある。
② 却下における要否判定調書の運用について【意見】
要否判定調書の結果は保護「要」となっているが、手持ち金があり、最低生活費を超える収入が あるとして、程度の決定では却下となっている事案を確認した。要否判定の根拠は明確であり、手 続自体に問題はないが、要否判定調書における判定結果が直接、却下の根拠となっていないため、 担当者以外はその根拠がわかりづらい。
要否判定の結果と要否判定調書が整合するように、要否判定調書の書式を工夫する、あるいは、 却下の理由で要否判定調書の結果との関連を丁寧に記録するなどの対応を図ることが望ましい。
③ 新規調査における適時の情報確認について【意見】
新規調査時に査察指導員の助言により、ケースワーカーが障害福祉相談課に確認した結果、障 害厚生年金の受給が判明し、却下となった事案を確認した。
これは、査察指導員の指導が適切であった例であるが、一方で、新規調査の訪問時から10日程 度経過しており、すでに扶養義務調査や預貯金調査、生命保険調査の依頼など新規調査が相当 程度進んでいる段階であった。早い段階で年金受給の確認手続を行うことで速やかに却下となり、 多くの新規調査が不要となった可能性が高い。新規調査時には申請者の状況を踏まえ、可能な限 り適時に必要な情報を得るように努める必要がある。
④ 境界層該当措置による却下時の新規調査について【意見】
境界層該当者であることが却下理由となる場合がある。この場合、却下の根拠となる最低生活費 の計算や、自己負担分減額分は要否判定調書に準じた別の判定シートで計算される。
生活保護費としては却下とすることで支出が発生しないが、この新規調査に基づき発行される境 界層該当証明書により、自己負担減額分が介護保険で賄われることとなる。
今回、根拠資料が不十分である場合が見られたわけではないが、境界層該当証明書は介護保 険負担増の根拠となるため、収入申告書や資産申告書、あるいは本人から提出された根拠資料だ けでは不十分と判断される場合は、新規調査に準じて根拠資料を入手する手続を追加し、より確実 な根拠に基づいて処分を行うように十分留意することが望ましい。
⑤ 却下関連資料の保管について【結果】
緑生活支援課では、保護申請を却下した場合、申請書から新規調査、却下に関わる資料一式は、 別途、まとめて保管することとなっている。
しかしながら、却下後9か月程度の間、関連資料がまとめて保管されていないものがあった。調査 担当者によると、まとめて保管することを知らずに、個人で関係資料を保管していたとのことである。
組織的に資料を共有できる状態ではなく、資料紛失のリスクも高くなる。改めて却下資料の保管に ついて、ルールを周知する必要がある。
第4 外部監査の結果及び意見
Ⅲ. 生活保護費の支給手続
1.情報管理 (南生活支援課、緑生活支援課)
① 生活保護に係る情報の管理について【意見】
情報セキュリティに関するルール自体は情報セキュリティ対策基準などの市全体のもので良いが、 生活保護に係る事務や情報の特性を踏まえて、改めて情報の漏えいや毀損等のリスクを独自に評 価し、対策基準の中で特に重要な点、明確にすべき点、周知すべき点を具体的な事務や情報、場 面に適用した形で整理しておく必要がある。
その上で、非常勤職員などを含め、生活保護に関する情報を扱う者全員に対して、生活支援課 独自の研修や周知の機会を定期的に設けることが望ましい。その際、各生活支援課だけでなく、医 療扶助の診療依頼書発行用に被保護者データを保管している各まちづくりセンターなども対象とし て加える必要がある。
② 関連資料の引継ぎ、統合のルールについて【意見】
生活保護が廃止されたが、後に再び他区で保護が開始される事案や、被保護世帯同士が統合 して他区が担当することになる事案がある。その場合、従前の関連資料等の引継ぎが必要になると 思われるが、関連資料等の引継ぎについてのルールが明確となっていない。
過去の受給時の関連資料や世帯統合前の関連資料を参照することはあるとのことであるが、他 区にある関連資料の引継ぎに関して一定のルールが必要である。
③ 格付けの更新について【意見】
訪問格付けの更新時期についての統一的なルールが整備されていないため、訪問格付けの更 新は、各ケースワーカーの訪問計画や保護費決定業務等の日常的業務の量に左右される。
早急に訪問格付けの更新に係るルールを作成し、査察指導員によるケースワーカーの訪問計 画の実行状況や関連資料の更新状況の管理をより一層効果的に行い、ケースワーカーが訪問を 行いやすい所内環境を整えることが望ましい。
④ 格付けの見直し根拠の記録について【意見】
格付けについては、通常、生活保護の開始時にA1(月1回訪問)から始めて、3か月後にA2(2 か月に1回訪問)といった形で見直されている。以降、状況の安定等に応じて、B1(3か月に1回 訪問)、B2(4か月に1回訪問)、C(6か月に1回訪問)、D(1年に1回訪問)の格付けがある。
自立支援プログラムの適用時に格付けがA1から一気にCになる事案もあり、A2からB1になる 事案もある。また、世帯統合については上の格付けの世帯に合わせているとのことで、被保護世帯
第4 外部監査の結果及び意見
また、査察指導員は、訪問計画・結果表の査閲は行っており、計画に基づいた訪問が実施され ていることを確認しているが、関連資料の記録については、更新されたものは確認しているが更新 されていないものは十分に確認していないと思われる。
訪問のルールに従い、訪問格付けに応じた訪問を行い、継続的な訪問状況の確認を行うために は、査察指導員はケースワーカーの訪問の状況を常に管理、指導し、訪問が適時に行われ、関連 資料に被保護者の生活実態が適切に記録される体制を構築する必要がある。
1)関連資料の未整理
保護費の支給に係る重要な状況が発生しているが、その後 2 か月以上過ぎた段階でも、その 事実やその後の方針等が記録されていない事案を確認した。当該事案については、ケースワー カーが入手した関連の資料もまとめて保管されていなかった。
2)関連資料の更新遅延
格付けがB2の場合では、4か月に1度は訪問し、その内容を記録する必要があるが、7か月間 など一定期間、更新されていない例が複数見られた。別途、訪問計画・結果表ではその期間中に 訪問した記録は残されていたが、訪問した際の被保護者の生活状況や訪問格付けの見直し等に 関する記録の更新が一切行われていなかった。
3)関連資料の綴り間違い
他の被保護者の関連資料が一緒に綴られている例が見られた。関連資料は、保護の決定から 継続的な保護費の支給に関する、最も重要で唯一の記録である。過不足なく、常に最新の状態で 保管されている必要がある。
2.生活保護費の支給・現金管理
① 現金の管理について【意見】
口座振替を行っておらず、傷病等の状況により福祉事務所窓口に来所ができないなど、いくつ かの条件が重なっている場合に、複数の職員で被保護者に保護費を届ける場合がある。
「生活保護費の支給等に係る事務処理要領」には、保護費の運搬として、「福祉事務所の職員が 保護費を金融機関から運搬する必要がある場合、原則として給付班の職員及び非常勤特別職の職 員(警察OB)が運搬する。」との定めはあるが、被保護者に保護費を届ける場合の取扱いについて は特段定めがない。
現金の取り扱いについては、そのリスク等を勘案すると、例外的なものも含めてルールを明確に しておく必要がある。被保護者に保護費を届けるケースも同様で、ルールを明確にしておく必要が ある。
② 代理納付の励行について【意見】
市では、基本的に代理納付を推進していく方針であるが、県営住宅等の場合、2か月滞納した際 には代理納付に切り替えることを検討している。滞納していない場合も適宜判断するとしているが、 代理納付への切り替えを促す取組みが十分とは言えない。
第4 外部監査の結果及び意見
今後は新規事案については勿論のこと、現在代理納付を活用していないものについても、被保 護者の自立等の観点も十分に配慮した上で、順次、代理納付への切り替えについて、被保護世帯 への働きかけをより一層進めることが望まれる。
3.援助方針
① 援助方針票の更新未了について【結果】
担当ケースワーカーが被保護者の転居を確認し、あわせて援助方針を再検討した旨の記録があ ったが、再検討後の援助方針が保管されていない事案を確認した。
援助方針票の見直しは、世帯状況等の変動にあわせて行うほか、世帯の状況等に変動がない 場合であっても、少なくとも年に1回以上行うこととなっている。援助方針票を確実に更新するととも に、更新されていることをより効果的に確認する仕組みについて、改めて見直す余地があると考え られる。
4.保護受給開始後の調査及び指導指示等
① 求職活動状況申告書の徴取とその記録について【意見】
「求職活動状況申告書」は毎月提出する義務があるが、現状においては毎月は提出されていな い事案も存在している。このような事案のなかで、指導を行うべきところ、それを行ったことを示す記 録が残されていない事案を確認した。市に確認したところ、求職活動状況申告書の提出に関する 指導記録が漏れていたようである。
担当者以外の者には指導を行ったかどうかが明らかでないこと、生活保護法第27条に基づく文 書による指導指示を行う起点となることを鑑み、指導を行った場合には、その旨を適切に記録する 必要がある。
② 求職活動状況申告書等の未提出への対応について【意見】
「求職活動状況申告書」等は毎月提出する義務があるが、「求職活動状況申告書」・「収入申告書」 が必ずしも毎月提出されていない事案を確認した。
必要書類の提出や申告は生活保護を受給するために必要な事項であり、被保護者の義務であ る。提出がない場合は他の被保護者との公平性の観点からも問題である。
求職活動状況申告書等については、求職活動が行われている実態があれば、継続的に提出を 促しているとのことであるが、必要な書類の提出がない場合について、適切な対応が望まれる。
第4 外部監査の結果及び意見
④ 収入申告等の挙証資料について【意見】
収入認定等につき挙証資料が不十分な事案を複数確認した。自営業の被保護者の場合に収入 申告は本人のメモのみで行われ、領収書の控え、現金出納簿や原材料仕入れ簿等の販売収入の 正確性を間接的に担保する資料が残されていなかった。また、過去の過大保護費を収入認定して いるが、その計算根拠が保管されていない例もあった。
収入について、より十分な挙証資料を提出するように被保護者を指導する必要がある。
⑤ 受給開始後の資産調査について【意見】
市では、基本的に被保護者の自己申告に基づいて収入額を把握しており、加えて毎年課税調 査により税務上申告された収入を確認している。しかしながら、こういったことも意図的に収入を隠さ れればほとんど意味をなさない。
自営業などで収入が一定規模以上になる可能性がある場合や、保護費以外の収入を得ている期 間が一定期間以上に及ぶ場合などは、資産調査の実施をルール化することも検討する必要がある。
⑥ 反社会的勢力への把握について【意見】
受給開始後すでに10年以上経過している事案において、最近になって反社会的勢力との関係 が明らかとなった事案を確認した。反社会的勢力との関係のチェックが強化されたのは近年である が、それまでの状況から、より早期に確認することができたと思われる。反社会的勢力との関係の確 認については、より一層留意することが求められる。
⑦ 状況に応じた柔軟な訪問頻度について【意見】
まとまった収入が見込まれるものの、それがいつであるかが不明な状況にある事案があったが、 その場合でも特に訪問頻度が高くなっていなかった。
状況に応じた柔軟な訪問等の対応は、承認を受けた上で積極的に行う必要がある。
⑧ 訪問計画に応じた訪問の未実施について【結果】
格付けに応じて原則的な訪問頻度が定められており、各ケースワーカーは訪問計画を作成して いる。しかしながら、訪問計画どおりに訪問が実施されていない事案が見受けられた。
例えば、計画では4か月に1回訪問する必要があるが、世帯員が不在であったため、結果的に 10か月程度訪問の間隔があいてしまった事案を確認した。
年間訪問の計画に基づいた訪問を行うことが出来ないのであれば、格付けに応じて計画を立案 した意味がなくなってしまう。計画どおりに訪問を行う必要がある。
また、訪問時に不在であった場合には、査察指導員が指示し、速やかに担当ケースワーカーが 訪問することとしている。上記のように訪問間隔があいてしまっては、査察指導員の指示が適切に 行われていない、あるいは担当ケースワーカーにルールが周知されていないと考えられてしまう。 訪問時に世帯員が不在であった場合の次の訪問については、査察指導員と担当ケースワーカー が連携をとり、適切な訪問計画を再構築する必要がある。
第4 外部監査の結果及び意見
⑨ 訪問時に世帯員が不在であった際の記録等について【意見】
定期訪問の際に世帯員が不在であったため、担当ケースワーカーが連絡表を差し置く場合が複 数見られた。
就労等をしていないにもかかわらず訪問時に不在が多い世帯については、担当ケースワーカー や査察指導員のみでなく、組織的に状況を把握できるようにすることが求められる。たとえば、不在 の割合が高い世帯のリストを作成し、該当世帯への対応を図るための方針や体制を検討していくこ となどが考えられる。
⑩ 訪問頻度を見直す際の手続について【意見】
認知症対応型共同生活保護介護事業所(グループホーム)への訪問について、施設管理者等 から口頭により生活実態に関する報告を受けた旨が適時に記録されていない事案が見受けられた。 記録がなければ、その情報を組織的に共有できず、ルールどおりに行われていることの確認もで きない。担当ケースワーカーが継続的に被保護者の日常的な生活実態を把握し、訪問時に被保護 者の生活実態に変更がないのであれば、その旨を記録することが望ましい。
⑪ 訪問後のフォローについて【意見】
担当ケースワーカーが被保護者を訪問した際に行った指示や対応については、その後、いつ、 どのようなフォローを行い、その結果はどうだったのかを記録しておく必要がある。
訪問を行った結果として、生活実態の有無を改めて確認する必要性が感じられる事案が存在し た。当該事案については、その後、生活実態の有無についてどのようにフォローしているのかが不 明確であった。このような事案については、改めて状況を確認して、その結果を記録しておく必要 がある。
5.扶助額
① 医療扶助、介護扶助に関するケースワーカーのチェックについて【意見】
担当ケースワーカーは、医療扶助登録や医療券発行状況の確認、医療要否意見書の発行、レ セプトに関する問い合わせ対応などの機会に医療扶助の内容をチェックすることが可能である。援 助方針にもその旨を記載して被保護者の状況の把握に努めるとともに、診療依頼書や医療券の発 行は妥当か、実際にどの程度受診しているのか、病状の経過はどうかなど、医療扶助の妥当性に ついて慎重に確認することが求められる。組織としても、医療扶助の金額的な重要性を踏まえて、 ケースワーカーの配置や教育などに十分配慮することが望ましい。
なお、介護扶助においても、ケアプラン(介護利用票)の確認や介護扶助登録、介護券発行一覧
第4 外部監査の結果及び意見
り、最低生活の維持に支障をきたしていることは明らかであるが、その状況が 8 年以上続いている 事案を確認した。
市としての対応方針を明確にするとともに、その方針に基づき、各ケースワーカーが適正に業務 を実施していることを確保する体制を構築する必要がある。
また、やむを得ず例外を認めるのであれば、説明責任を果たせるよう、判断の根拠を明確にし、 定期的に状況を見直す必要がある。
③ 敷金等の精算について【意見】
転居後一定期間、旧貸家の家賃等精算の終了を確認していない場合が見られた。家賃等精算 の終了を確認していない旨の記録があり、担当ケースワーカーもその事実を把握していたが、結果 として、退去後3か月以上も家賃等精算の状況を把握できていない。
このような場合の対応方針を明確にするとともに、その方針に基づき、各ケースワーカーが確実 に業務を実施する必要がある。
④ 住民税について【意見】
被保護者が住民税に係る減免の申請手続を失念していたため、住民税が課税されていた事案 を確認した。
当該事案については、課税されたのは被保護者自身による申請書の未提出が直接の原因であ り、すでに還付手続きもなされているとのことであった。しかしながら、減免に係る説明や指導が十 分行われていたのかといった懸念も生じる。
減免の説明や指導についても、十分に留意して行う必要がある。
⑤ 源泉所得税について【意見】
給与所得を得ている被保護者について、源泉所得税が発生しており、当該所得税が必要経費と して収入金額から控除されている事案を確認した。
本事案については、給与額や被保護者の扶養親族等の状況を踏まえると、源泉徴収される状況 ではなく、所得税も納付する必要はないと考えられる。被保護者に税金の知識がない場合には、査 察指導員及びケースワーカーは支出額を抑えるための適切な指導を行う必要がある。
⑥ 固定資産税の減免について【意見】
固定資産税について、被保護者の申請が遅れたため減免を受けられず、固定資産税を1 期分 余計に負担せざるを得なかった事案を確認した。
当該事案については、課税されたのは被保護者自身による申請書の提出遅れが直接の原因で あるが、減免に係る説明や指導が十分行われていたのかといった懸念も生じる。
固定資産税の対象となる資産の保有を容認する場合には、減免に関する説明や指導も十分に 行う必要がある。
第4 外部監査の結果及び意見
6.生活保護の停止・廃止
① 廃止決定が「すみやか」に行われなかったことについて【結果】
年金の遡及支払いにより保護が廃止された事案で、年金が振り込まれた月から半年後に決定が 出されていた。
また、被保護者が医療機関に通っていたところ、医療費も保護費として支払われていた。本来で あれば健康保険を利用して支払われる費用である。
不要な事務手続の削減及び保護費支出の適正化のためにも、廃止決定手続はすみやかに行う 必要がある。
② 債権管理簿への記載について【結果】
保護の廃止に伴い、費用返還請求を行う必要が生じた案件で、債権管理簿に誤って氏名が記載 されているものがあった。
本人への通知など外部に出るものではないとのことであるが、入力等においては更なる注意が 必要である。
③ 賃料の現金支給について【意見】
被保護者への賃料を現金で支給していたところ、4か月分の賃料を滞納し明け渡しを求められる 事態が生じた。
現在代理納付への移行を進めているとのことだが、窓口での現金支給を行う場合をより限定し、 代理納付への移行をより進める必要がある。
④ 地方自治法施行令第 159 条に基づく返還請求について 【意見】
生活保護法第 29 条に基づく調査により預貯金等の存在が発覚した場合、発覚した時点で保護 廃止の決定を下し、それより前に支払われた保護費(医療扶助を含む)は、63条または場合によっ ては78条によって返還請求することになる。この場合には、被保護者が保護期間に医療扶助も受 けていれば、医療扶助費も返還請求する必要がある。
他方、保護開始時に遡って保護廃止とし、それまでに支払われた保護費を地方自治法施行令 159条に基づき返金する方法をとれば、被保護者は国民健康保険を利用することができ、この場合、 返還する医療費は自己負担分の1割となる。これは、法が予定する手続きと明らかに異なっており、 また、同様の事案における被保護者の扱いに不平等を生じる結果になる。
実際に保護開始時に遡り保護廃止とした事案があった。
今後、同様の事案が生じた場合には、法にしたがった処理がなされる必要がある。
第4 外部監査の結果及び意見
7.63 条返還金・78 条徴収金
① 78 条に基づく徴収が妥当と思われる事案について【意見】
医療費支給後、生活保護法第29条に基づく調査により銀行預金口座が発覚したが、支給した医 療費の返還請求を63条に基づいて行っていた事案を確認した。
発覚した預金口座は被保護者が日常使用していたもので、保護申請時において申請者はその 存在を認知していた可能性が高いと考える。当該預金口座の存在を認知していたにもかかわらず、 これを秘して保護を申請し、結果として医療費の支給を受けた可能性が高いと考えられ、78条に基 づく徴収がなされる必要があると考える。63 条返還金とするのか 78条徴収金とするのか、その取 扱いについては十分に留意する必要がある。
② 児童養育加算額の認定について【意見】
過去の児童養育加算額に関する収入認定を間違えていることが発覚し、生活保護法第 63 条に より費用返還を求めることとした事案を確認した。児童養育加算額の認定等、入力間違いが行われ ても保護システム上ではエラーにならない項目については、ケースワーカーだけに任せるのでは なく、組織的に入力誤りをチェックする一覧表等を準備し、査察指導員等の上長者のチェックがより 効果的に行われるように工夫することが望ましい。
③ ケース診断会議の遅延について【意見】
過去の障害者年金に関する収入認定を間違えていることが発覚し、生活保護法第63条により費 用返還を求めることとした事案では、当該決定を求めるケース診断会議が、発覚後8か月経過した 時点で実施されていた。ケース診断会議及び費用返還は適時に行う必要がある。
8.不正受給防止のための取組み 特に記載すべき事項はない。
9.自立支援プログラム
① 就労支援の実効性について【意見】
実効性のある就労支援には、専門的な知識や経験が必要である。現在のケースワーカー中心の 自立支援は、少なくとも就労支援については限界が来ているのではないかとも考える。就労支援の あり方については、最適な方法を模索していく姿勢を常に持ち続ける必要がある。
② 生活困窮者自立支援制度の効果的な運用について【意見】
生活困窮者自立支援制度は、生活困窮者が生活保護に至ることを防ぐとともに、生活保護開始 後の支援よりも生活困窮状態からの早期の脱却や自立の可能性が高くなる仕組みと考えられる。 平成 26 年度から他の区でも窓口が開設され、全市的な取組が始まっているが、南生活支援課の 経験を十分に踏まえて、より効果的な仕組みとなるよう対応を図っていく必要がある。
第4 外部監査の結果及び意見
Ⅳ. その他
1.不服申立て
特に記載すべき事項はない。
2.生活保護法施行事務監査 特に記載すべき事項はない。
3.国庫支出金・県支出金 特に記載すべき事項はない。